禁煙・減酒治療

はじめに

はじめに

 死というものはいずれ私たちに等しく訪れます。…とは言っても平均寿命より極端に若い年齢で死亡することは回避したいものです。日本人の死亡リスクを高める要因として、喫煙、高血圧、運動不足…と続いていますが、その中でも、タバコやアルコールといった嗜好品による要素は無視できません。


 タバコやアルコールが体に悪いことは誰しもがわかっていますが、連用が続くことで依存性も出現するため、いざやめるということが難しいことは誰もが実感しています。


 近年禁煙、減酒の成功率を高めるユニークな治療薬が利用できるようになっています。当院でもこれらの積極的にお勧めしたいと考えていいます。

禁煙治療


ご予約について

 タバコは、肺の病気やほとんどのがん(子宮内膜がん、甲状腺がんを除く)のリスクを高めることに加え、循環器疾患のリスクを高めます。

   当院の禁煙外来では、薬剤(チャンピックス®、ニコチネルTTS®)とスタッフのサポートによって、ニコチン切れによるイライラなどの離脱症状を和らげながら、無理のない禁煙を目指します。


 一定の要件を満たす場合、健康保険が適用されます。治療期間は通常12週間で、計5回通っていただき診察を行います。薬剤などを患者さんの状態に合わせて処方し一緒に禁煙達成までの道のりをサポートします。


〇 何度か禁煙に挑戦したが、失敗してしまった

〇 家族の健康のためにタバコをやめたい

〇 血圧や脂質などが高いといわれはじめて、将来の健康リスクが気になっている

という方はご検討ください。

保険適用についての条件

予診票の記入

□    ニコチン依存症判定テスト≧5点

1日の喫煙本数 × 喫煙年数が200以上であること(※35歳未満の場合はこの要件は不要)。

直ちに禁煙することを希望していること。

過去1年以内に保険適用で禁煙治療を受けていないこと。


使用する薬剤

アルフレッサファーマ 資料より

 いずれも、0週、2週、4週、8週、12週での診察を行い禁煙でき来ているか確認しながら処方を行います。


ニコチネルTTS® (3か月間の総費用  3割負担で 10000円)

  ニコチンを補充する貼り薬によるニコチン置換療法です。少しずつニコチンを皮膚から吸収させ、離脱症状(イライラや集中力低下)を和らげる薬です。

使用法:1日1回、腕やお腹、背中などに貼ります。徐々にパッチのサイズ(ニコチン量)を小さくしていき、約8週間かけて無理なくニコチンから離脱します。

副作用: 貼った部分のかぶれやかゆみなど。


メリット:運転制限などの日常生活への影響がありません。

  

 ニコチンパッチは薬局で購入してご自身で行うこともできますが、保険診療の場合には薬局よりもニコチン含有量が多い製剤を使うことができ、成功率が高くなるとされています。

ファイザー 資料より

 チャンピックス® 3か月間の総費用  3割負担で13000円)

  脳のニコチン受容体に結合し、喫煙しても吸ってもニコチンが受容体に結合するのをブロックし、「美味しい」「落ち着く」といった満足感を感じなくなります。脳に直接働きかけて「タバコを吸いたい」という欲求自体を抑えます。


使用法: 最初の1週間は薬を飲みながらタバコを吸っても構いません。8日目から完全禁煙し、合計12週間(約3ヶ月)服用します。


主な副作用: 吐き気、頭痛、便秘、普段と違う夢を見るなど。眠気が報告されており、アルコールチェッカーなどが義務づけられるような職業運転手の方は、使用ができないことがあります。


メリット: ニコチネルTTS®よりも禁煙成功率が高いとされていますので、原則としてはチャンピックス®での治療をお勧めします。


 チャンピックス®は2021年から2025年秋まで出荷停止となっていましたが、出荷再開し利用できるようなっています。

減酒治療

 お酒をいきなり断つ(断酒)のはハードルが高いけれど、飲む量や頻度を減らしたい、という方を対象とした治療法です。当院では、ナルメフェン

(商品名:セリンクロ®)というお薬を用いたアルコール低減治療(減酒)を行っています。


 このような方におすすめです。

〇健康診断で肝機能や血圧の異常を指摘され、お酒を控えるよう言われた

〇つい飲みすぎてしまい、翌日の仕事や生活に支障が出ることがある

〇いきなりの断酒には自信がないため、まずは減酒から始めたい 

治療開始にあたっての条件

 まずは、問診で日頃の飲酒状況や生活習慣についてお伺いします。

  このお薬は、軽症〜中等症のアルコール利用障害があり、ご自身が「お酒を減らしたい」という意思がある方が対象となります。重度の利用障害の方は、断酒が必要なケースもあり必要に応じて専門の精神科外来に紹介いたします。

アルコール利用障害とは

 どうしてもお酒を飲みたいという強い欲求、以前と同じ量で酔いが回りにくくなる耐性形成、お酒を飲まないと寝つきが悪くなる、不安を感じる、手が震えるといった身体・精神離脱症状のために、身体的、精神的、社会的な障害やトラブルのある状態です。

何らかのアルコールの問題のある方から重度依存症の方までをまとめてアルコール使用障害としています。誰しもが陥る可能性がある、正常使用とは地続きの状態であるということです。

精神症状:強い欲求・自制が困難・不眠やうつ症状の悪化

身体症状:同じ量では満足できない(耐性)、離脱症状、血圧上昇や肝障害

社会症状:家庭生活に影響、仕事での障害、飲酒運転、対人関係の悪化

肝硬変への進展ははもちろん、少量の飲酒でも高血圧やがんなどのリスクを高めるとさえて言います。進行した方を精神科医や肝臓専門医に任せてしまうのではなく、至る前の段階でとどめることが内科医、かかりつけ医の役割と考えています。

セリンクロ®による治療の流れ


  飲酒日記の記録や生活指導などを通じて、無理のないペースで飲酒量をコントロールしていくためのサポートを行います。


 セリンクロ®は、中等症までのアルコール利用障害の治療に使われるお薬です。急に飲酒を中断すると離脱症状が出るような症状の進んだ方はこの治療の対象にならず、精神科などの専門医への受診をお勧めしています。


1. 薬の働き

常用飲酒者では脳の中では快楽物質(ドーパミンなど)が分泌されます。この快感がクセになり、、もっと飲みたい、この量では満足できないという強い欲求につながってしまいます。セリンクロは、脳の中にあるお酒による快感を受け取るスイッチに先回りしてフタをするように働きます(※)。


専門的には、脳内のオピオイド受容体(μ、δ、κ)に働きかけて、アルコールによる報酬系(快感を感じる神経回路)の過剰な働きを調節しています。

大塚製薬 HPより


2. 期待できる効果

少量で満足感が得られるため、飲酒量を低減することが期待できます。死亡率、日常生活の質、肝障害に有効であるとの試験結果があります。


3 服用のタイミング

  飲む1〜2時間前に服用することです。お酒を飲まない日は、服用する必要はありません。また、お酒を飲み始めてしまってから「やっぱり飲もう」と気づいた時でも、できるだけ早く服用可能です。


4. 注意していただきたいこと

 ご自身の意志と、心理社会的治療を組み合わせることで、初めて効果を発揮します。このため、量を減らそうという意志のある方にしか処方はできません。  


 

   わざわざ病院にいかなくても何とかなるのでは…というお気持ちもおありと思いますが、習慣を簡単には変えることは難しいことが多いのではないでしょうか。


   禁煙や減酒が実現することで、他の楽しみが増え、日々の出費も抑えることが可能になるでしょう。「禁煙したいけれど、なかなか続かない」「お酒の量を少しずつ減らしたい」といったお悩みに対し、根性論でなく医学的なアプローチで目標に近づけるようお手伝いいたします。まずはお気軽にご相談ください。これを機会に取り組んでみませんか。